従業員らに接種始まる 3,500万人対象、出勤必要なら

フィリピン政府は7日、出勤などの必要がある企業の従業員らを対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種を始めた。全国の約3,500万人が対象となり、マニラ首都圏や大都市圏を中心に接種を進める。医療従事者や高齢者への接種を優先してきたが、より幅広い層に接種を拡大することで感染リスクを抑えながら経済活動のさらなる再開を目指す。

マニラ首都圏パサイ市の複合商業施設「モール・オブ・アジア(MOA)」で7日、接種イベントが開催された。民間企業の従業員や自営業者、公務員で、出勤など自宅以外で業務をする必要がある人は全て対象となる。ロペス貿易産業相は「感染を恐れて出社に消極的な従業員に、ワクチンは大きな効果をもたらす」と話した。
会場では、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の従業員、旅行ガイド、パサイ市のトライシクル(三輪タクシー)運転手、ファストフードチェーンの従業員、娯楽産業の従業員、教師、公務員ら約50人が接種を受けた。社員証などにより働いていることを証明できれば接種できるという。

政府は現時点で約980万回分のワクチンを調達しており、今月は240万回分が追加で届く見通し。新型コロナワクチン戦略責任者のカリート・ガルベス氏によると、8月までに3,000万~4,000万回分の調達を見込んでいる。
国内の過去1週間の新型コロナ感染者数は1日当たり5,000~7,500人程度と、感染が急増した3月よりも高い水準が続いている。働いている人に対するワクチン接種が進めば、感染抑制や消費者心理の改善が見込めそうだ。

政府が新型コロナ対策で実施している外出・移動制限措置は約1年3カ月間にわたり、フィリピン経済は東南アジア主要国で最も落ち込んでいる。失業率も7%台と高いままだが、ロペス貿産相は「接種の加速で今年中に6%、来年に5%台に下がることを期待している」と話した。
ワクチン接種計画のほか、政府は接種完了者への行動制限の緩和やデジタル証明カードの付与も検討している。デュケ保健相は「マスクやフェースシールドの着用をやめることなどが想定されるが、接種済みの人が別の人に感染させないという証拠はまだ不十分だ」と述べた。

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